法華経一部読誦講習会 in WEST

一々文々のオウム返しによる一部経読誦の講習会です。令和元年より関西でも開講しております。

フ・ク・ツ・チ・キ

皆さんは「三十分」を何と読みますか?「さんじゅっぷん」と読まれる方が意外と多いのではないでしょうか?

漢和辞典で「十」を調べると、「ジュウ・ジッ・とお・と」と読みが記してあります。ここからわかるように、「十」には「ジュッ」という読みはありません。

お経に出てくる「十」の振り仮名を見ますと、「ジフ」と書いてあります。

これを現代語では「じゅう」と書くのでしょう。「五十人」の場合は「ごじゅうにん」で問題ありません。

 

漢字の読みには、前後の文字の繋がりにより読み方を変える場合が幾通りかあります。

例えば「学」は「ガク」と読みますが、「学校」の時は「ガッ」と読みが変化します。

この変化を促音便といい、「フ・ク・ツ・チ・キ」の文字を小さい「ッ」に変えて発音します。

このルールを用い、冒頭の「三十分」の場合は「サンジフ」の「フ」を小さい「ッ」に変化させ、「サンジップン」と読むのが正解です。

仏教用語でいえば、「十界(ジッカイ)」「十方(ジッポウ)」などが同様で、「じゅっかい」「じゅっぽう」と発音するのは誤りです。

 

 

他にも「及(ギフ)」「法(ホフ)」「塔(タフ)」など、促音化する文字がお経には多く出てきます。

これらを、例えば「ギュウ」と読むのか「ギッ」と読むのか、判断が難しい場合があり、私たちを悩ませています。(「ギュッ」は誤りです)

 

専門的な資料を調べますと、入声音(四声の一つ。またあらためてコラムに書きます)の時には「フ・ク・ツ・チ・キ」を小さい「ッ」に促音化させる、とあります。

ですが、私たちの普段使用していますお経本には四音が記されていませんし、どの文字が入声音かをすぐに判別できません。四声が記されたお経本を見たとしても、現代の私たちには四声を正しく発音することは不可能です。また、中にはそのルールに当てはまらない音変化もあるようです。

 

私たちは「ジフ」や「ギフ」を「じゅう」「ぎゅう」と振り仮名を振りますが、本当に「ジフ」は「じゅう」と発音してよいのでしょうか?もしかしたらそのまま「ジフ」と読むのかもしれません。

「そんなもの、どちらでもいいじゃないか」というご意見もあるでしょうが、日蓮聖人がどのように法華経を音読なさっていたのか、興味の尽きることはありません。

日蓮聖人と同じ発音が無理だとしても、出来るだけ正しい発音に近づけられるとよいなと思い、これからも研鑽を深めてまいりたいものです。