法華経一部読誦講習会 in WEST

一々文々のオウム返しによる一部経読誦の講習会です。令和元年より関西でも開講しております。

方便品を探せ!

法要が始まり、開経偈にてお経頂戴、持ち上げたお経本を経机に降ろすや否や、導師による方便品第二の発音。慌てて一之巻を手に取って方便品を開こうとするも、その箇所がすぐ見つからずにアタフタする・・。

皆様はそんな経験をなさったことがありませんか?

自坊のお経本ならまだしも、他寺の経机にある慣れない八巻本では、パッと方便品を開くのは少し難しいですね。

そんな皆様に一つ、私的なコツをお伝えしようと思います。

 

まず、方便品は一之巻のだいたい真ん中くらいにありますから、一之巻を手に取り、おもむろに半分くらいの所を開いてみてください。

運よくピッタリ方便品の箇所が開けられることも結構ありますよね。

 

でも、ちょうど探している場所が開けられなかった時は、ちょっと困ります。

何故なら、序品の経末も、そして方便品の十如是の直後もまた五字偈だからです。

探している箇所の直前・直後がどちらも五字偈ですから、パッと見ただけではそれが何品なのか瞬別できず、探している方便品の冒頭が、今開いている箇所よりも前なのか後ろなのか悩みます。そして、逆方向へ頁をめくってしまったりして、どんどんと遠ざかっていくという負のループ…。

 

そんな時、私は経文に登場してくる人物名を手掛かりにして、目的箇所へと辿り着くようにしています。

 

序品では、三昧に入っておられるお釈迦様の周りで数々の奇瑞が起こります。それをご覧になった文殊菩薩様が、

「遠い過去世、日月燈明佛という仏様がまさしく今と同様の奇瑞をあらわされ、その後に法華経をお説きになった。その時、私は妙光菩薩として日月燈明佛様より法華経聴聞していた」と明かされます。

そして、「お釈迦様もこれから法華経をお説きになるだろう。合掌して一心に待ちたてまつれ」と述べられて序品は終わります。

序品の経末から三十行ほど遡りますと、その間に、話し手である文殊菩薩様の過去世でのお名前、「妙光菩薩」様のお名前が7回出てきます。

 

続いて、お釈迦様は三昧より安詳として起って、舎利弗様に話しかけられるシーンから方便品が始まります。

その後も、方便品ではお釈迦様は舎利弗様に向かって話され、舎利弗様の度々の懇請に応えるようにして法が説かれますので、聴き手はずっと舎利弗様です。

十如是に続く五字偈のことを、初句に因んで「世雄偈(せおうげ)」と呼びますが、この21行の世雄偈の中に「舎利弗」様のお名前が4回出てきます。

 

読み慣れてくると、字面を見て「あ、ここは序品だ」「ここは方便品だな」とすぐに判断できるようになりますが、振り仮名付の経本を読んでいる方や、習ったばかりで自分の書き込みを頼りにしている状態ではなかなか漢字や文の意味には目や意識が行きません。

そんな方は、とりあえず頁に広く目を向けて、妙光菩薩様か舎利弗様のお名前を探してみてください。

そして、妙光菩薩様のお名前が見つかれば「ここは序品だ!」と頁を先へ進め、舎利弗様のお名前が見つかれば「ここは方便品だ!」と頁を前に戻り、探している方便品の箇所へと辿り着いてください。

 

法要の参列者は式衆の姿をよく見ています。

なかなか目的箇所を見つけられず、頁の行ったり来たりを何度も繰り返している姿は、法要としては美しくありませんし、酷い場合は、「あれ?あのお上人さんはお経が読めないのかしら?」などと思われるかもしれません。

方便品が始まれば、できるだけ早くにその頁へ辿り着きましょう。