法華経一部読誦講習会 in WEST

一々文々のオウム返しによる一部経読誦の講習会です。令和元年より関西でも開講しております。

八歳龍女の祀られるお寺

前回、五之巻の講習会で三木上人の講義を聞いて、コラムにしようと考えてたことがありました。

提婆達多品には、 娑竭羅龍王の8歳の娘が登場し、その会座にいた皆の前で成仏の相を現し、一同を驚かせます。
提婆達多の悪人成仏と龍女の女人成仏は、法華経が諸経に優れる所以の一つであり、とても重要な法門です。

さて、三木上人は内容講義の際、
「この八歳の龍女が祀られているお寺がありますが、皆さんご存知ですか?」
とお尋ねになりました。
コラムをお読みの皆さま、ご存知ですか?

京都市中京区に、神泉苑という真言宗のお寺があります。
その始まりは794年、平安京造営と時を同じくし、平安京最古の史跡とも呼ばれています。
節分の頃に、 歳徳神が祀られた恵方社と呼ばれる御社が話題になることが多いのですが、実はこの神泉苑に、提婆達多品に説かれる八歳の龍女が祀られているのです。

平安時代の天長元年(824)、大旱魃により人々は大いに苦しんでいました。
そこで、淳和天皇弘法大師に雨を降らせるよう命じました。
弘法大師は、神泉苑龍神様を北天竺より招き、雨乞い修法を行った所、見事に恵の雨が降った、と伝えられます。
以後、神泉苑は祈雨の霊場として貴ばれ、真言僧をはじめ、小野小町静御前なども雨乞いを行ったと伝えられています。

天長の祈雨の時に弘法大師が招いて祀ったという龍神様のお名前は「善女龍王」といいます。
調べてみますと、なんとこの善女龍王こそ、提婆達多品に説かれる八歳の龍女なのだそうです。

善女龍王は 娑竭羅龍王の第三王女で、神泉苑の他、高野山にも祀られ、また醍醐寺などに祀られる 清瀧権現も同一の龍女とされています。
ちなみに、歳徳神もまた、娑竭羅龍王の娘とされていますが、諸説あるようです。しかし、神泉苑では、善女龍王社のすぐ前に恵方社が構えられており、関わりの深さを想像せずにはおれません。

私、何も考えずに自転車でふらっと写真でも撮りに、と出掛けたのですが、なななんと、今年2024年は、上述の天長元年(824)の祈雨からちょうと1200年となり、神泉苑では「善女龍王御勧請千二百年 神泉苑祭」が開かれていました。
普段では入れない善女龍王の本殿の目前まで入ることが出来、また拝殿には立派な御神輿も祀られていました。

日蓮聖人も鎌倉で雨乞い祈祷を修され、見事に雨を降らされていますが、その霊場には八大龍王が祀られています。
ご遊学の折、神泉苑にも立ち寄られ、龍神様の効験も耳にされていたのではないか、と想像し、なんだか嬉しくなった今日の出来事でした。
皆様も是非お参りに行ってみて下さい。