法華経一部読誦講習会 in WEST

一々文々のオウム返しによる一部経読誦の講習会です。令和元年より関西でも開講しております。

呉音と漢音

漢字の読みには「呉音」と「漢音」という読み方があります。

 

私たちは、日常会話で漢字を読む時、主に「漢音」という音で発音します。

一方、お経を読む時は、「呉音」で発音することが多いです。

例えば、「食」という字は普通「ショク」(漢音)と読みますが、食事を断つ修行のことは「断食(ダンジキ)」といい、この時、「食」の字は「ジキ」(呉音)と読みます。

 

呉音とは、中国南方の古い発音で、西暦538年に日本に伝わったお経は呉音で発音されていました。

しかし、遣隋使や遣唐使が盛んに大陸へ渡り、多くの物事を学ぶにつれ、呉音ではなく当時長安の都で発音されていた漢音が用いられることが多くなりました。

平安時代には、桓武天皇が漢音を推奨する詔を発するなど、お経の読みも漢音にすべきだと定められました。

ですが、昔から定着していたものを覆すのは難しかったのか、なかなか漢音でのお経の発音は定着できず、百年経たずして「旧の如くに正せ」とおふれが出されるのでした。

 

そんな混乱もあってか、私たちはお経の文字全てを呉音で発音しているかというと、実は、中には漢音で発音しているものも多くあります。

さらには、慣習音といい、呉音でも漢音でもない、日本古来の読み癖とも言える発音をしている文字も少なくありません。

正しいお経の読みを考えた時、何を基準に正否を判断するのかは、とても頭を抱える問題です。先師が読み伝えて来たお経を軽々しく誤りと判ずることはできません。

 

個人的に音義についての学問も深めてまいりたいと思いますが、一部経読誦講習会を通じて、皆様方とともに、古来の発音、お経の意味、これからの時代へ伝えていくべきお経の読みを、じっくりと考え、探っていければと考えるところです。